問題を深く分析するかわりに、「どうなりたいか」「何を手に入れたいか」という未来イメージを創造する過程を先行させ、そこから目の前の具体的行動を変化させるように導くプロセスがソリューションフォーカスの手法です。組織のリーダー、指導者がこの発想をするかどうかで、組織の問題解決に至る道のりが長く苦しいものになるか、最短距離で効率の良いものになるかの違いをつくります。上司部下関係、コーチング、その他一対一で相手をサポートする様々なコミュニケーションにおいても、相手が欲しいものを手に入れることを援助しようとするのであれば、大変効率の良い手法であり得ます。
もし目の前に問題があり、それを解決しようと強く思うほど徹底的に問題の原因を追求しようとしがちです。しかし問題にも色々種類があります。物、金、システムの問題は頭を使ってよく問題を分析することで、より良い結論が導かれることが多いでしょう。ところが人のつながり、組織の問題は、「分析」=「誰が悪いかの犯人探し」になってしまうことが多いのです。機械が壊れていたら黙ってモノ言わず直されるでしょうが、人は自分が悪いとされただけで反発心が生まれ、自分が悪いのではなく他の〜が悪いという正当化をしようとします。そして問題は解決するどころかこじれてしまうことになります。
多くの場合、問題を解決できないままでいるのは、問題に焦点をあて過ぎるあまりソリューション(問題がなくなった状態)イメージを思い描いていないからです。「しかし、この問題を何とかしてからでなければ、その先なんて考えられない。」これが落とし穴なのです。なぜうまくいっていないのかを徹底的に分析する必要があるのはモノづくりや事故の調査の場面です。人間の行動をより生産的な方向に導くためのコミュニケーションの中では、問題は必要以上に大きく扱わないことが最短距離で解決に向かうためのポイントになります。そして「何が悪いか」ではなく「どうすれば良いか」に早めに焦点を絞るのです。問題よりも解決に焦点をあてるソリューションフォーカスという考え方およびコミュニケーション手法は、個人や組織が持つ目的、目標に向かって最短距離で行動を展開するために最適なツールと言えます。
簡単に歴史を解説すると、セラピー手法としての解決志向アプローチ、SFA(Solution Focused Approach)は1980年代半ばにスティーブ・ディシェーザーとインスー・キム・バーグ夫妻を中心にしたアメリカの家族療法セラピストたちによって開発されました。その後、SFAは教育や健康保健などの領域で活用され、さらにはマネジメントや組織開発などビジネス領域でも活用されるようになりました。ビジネス領域での活用を促進したマカーゴウ&ジャクソンのSF解説本のタイト ルが"The Solutions Focus"であったことから、ビジネス領域ではSF(ソリューションフォーカス)の呼称が定着してきています。
本間正人さんのインタビューに答えてソリューションフォーカスの説明をする青木安輝 YouTube「SolutionFocus」 |
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